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パネルディスカッションⅠ
Next Generationの挑戦
結果を出すための治療・評価でチャレンジしていること

井坂 晴志

いまむら整形外科

 

『肩前方部痛の病態解釈に対する取り組み』

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 有痛性肩関節疾患では肩前方部痛が多く、その改善に難渋する例も存在する。肩前方部痛の発生要因は多岐にわたり、その病態に合わせた治療介入が必要となる。

 肩関節前方の軟部組織には、三角筋前部線維、上腕二頭筋、烏口腕筋、肩甲下筋、前方関節包があり、これら軟部組織の栄養は腋窩動脈より分岐した前上腕回旋動脈が担っている。近年、軟部組織周辺の血流の動態異常が疼痛発生要因の一つであることが報告されており、炎症に伴う新生血管の発現や血流速度と夜間痛の関連も示唆されている。

 そこで①前上腕回旋動脈の解剖学的差異による症状の有無、②前上腕回旋動脈の血流の動態異常が肩前方部痛に関与する、という仮説をたて現在検討している。

 今回は、これら検討に必要な周辺解剖の紹介並びに、前上腕回旋動脈の解剖学的差異について肉眼解剖を参考にエコーによる同血管の描出方法の確認を行うとともに、病態解釈やその病態に合わせた治療方法について報告する。

古田 亮介

たなけん脊椎眼科クリニック

 

『病態から分けて介入を行う仙腸関節障害』

仙腸関節障害は腰痛の原因の一つとされています。その重要性については多くの報告がありますが、仙腸関節障害を専門的に診療している病院以外では、医師がこの障害を診断することは少なく、セラピスト自身が評価を通じて発見する必要があります。我々セラピストにとって、腰痛の原因の一つとして仙腸関節障害の可能性を初見で疑うことは少ないかもしれません。今回、仙腸関節障害をあまり見たことがない(または見逃している)セラピストに向けて、どの所見があれば仙腸関節障害を疑うべきか、その評価と鑑別方法をお伝えします。また、仙腸関節障害は、不意の外力や繰り返しの微小外力により関節の不適合性が生じ、機能障害を引き起こすものです。この病態は不安定性にも基づくものと理解されつつあります。不意の外力や微小外力がどこから生じるのか、不安定性がどのようなものか、その解釈と、実際の臨床で行っている介入方法について、自身の研究と知見を基にお伝えします。

服部 隼人

森ノ宮医療大学附属大阪ペインクリニック

 

『内側半月逸脱の改善に向けた評価と理学療法』

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内側半月の逸脱(MME)は変形性膝関節症の病態進行を加速させる要因として重要視されているが, MME発生の運動学的要因については不明な点も多い. エコーを用いた歩行中のMMEの動態に関する報告は多数されており, 特に下腿の内外旋との関連が注目されている(Okamoto, 2024). また近年, 内側半月と後内側関節包, 半膜様筋の腱鞘は連続した構造であることが明らかになっている(Tsutsumi, 2023). そのため我々はエコーを用いて下腿外旋角度を測定し, 歩行中のMMEとの関連や歩行中の内側半月と膝関節包の動態について研究を進めている. 荷重位および歩行中のMMEを減少させるには膝関節伸展と下腿外旋角度の改善が重要であると考えており, 半膜様筋とその周囲構造に対する理学療法が効果的な可能性がある. 今回のパネルディスカッションでは実際に臨床で行なっているエコーを用いた下腿外旋角度の評価や半膜様筋とその周囲構造に着目した理学療法について述べてみたい.

河田 龍人

名古屋スポーツクリニック

 

『長母趾屈筋腱の周囲脂肪組織に着目した

      足関節後方部痛の病態解釈』

 足関節の後方部痛は,三角骨障害やSteida結節障害などによる骨性要因と長母趾屈筋(以下,FHL)腱障害やアキレス腱障害などによる軟部組織性要因に大別される.その中でも,FHL腱障害は,距骨後方のfibro-osseous tunnel部や,母趾種子骨間,長趾屈筋腱との交叉部,母趾末節骨底付着部での発症がこれまで報告されている.特に,fibro-osseous tunnel部では,その他の部位と比較してFHL腱に供給する血流が乏しいことや,腱の走行の変化が大きく,過度な応力が加わりやすいことなどから,障害の発生が多いとされている.

 また,実臨床では足関節捻挫や骨折などの外傷後にFHL腱のみならず、周囲脂肪組織の滑走障害が病態に関与している症例を経験する.しかしながら,それらの機能解剖について詳細に研究されたものがないため,不明な部分が多く,上記病態および症状発現のメカニズムも証明されていない.

 したがって,今回は、FHL腱における周囲脂肪組織の機能解剖に着目し,理学所見の解釈も含め同部位の足関節後方部痛への関与について検討したため報告する.

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